- 2025/12/28
Summary
ゼブラフィッシュ仔魚をモデルとして,神経活動依存的な細胞標識とscRNA-seq 解析を組み合わせた「CaMPARI-seq」を開発し,オプティックフローに応答する前視蓋ニューロンを標識可能な遺伝子の同定を試みた。
我々動物は,受け取った視覚情報に基づいて適切な行動を生み出している。なかでも,視野全体が流れるように動くオプティックフローは,視線や身体の動きを制御し,視野の安定を保つうえで重要である。こうした視覚情報に基づく行動制御は脊椎動物に広く保存されており,ゼブラフィッシュ仔魚はその研究に適したモデルである。我々は,神経活動依存的な細胞標識とscRNA-seq 解析を組み合わせた「CaMPARI-seq」を開発し,オプティックフローに応答する前視蓋(pretectum)ニューロンを標識可能な遺伝子の同定を試みた。図は,in situ HCR 法により可視化したTg(tcf7l2-hs:Gal4FF);Tg (UAS:GFP)トランスジェニックゼブラフィッシュ仔魚(yellow)におけるmafaa(magenta)およびnkx1.2lb (cyan) の遺伝子発現領域を示す。本手法により,前視蓋ニューロンのサブセットを標識・操作することが可能となり,オプティックフロー情報処理に関わる神経回路の理解を大きく前進させると期待される。

理化学研究所 脳神経科学研究センター 松田 光司
(出典: 学会誌「比較生理生化学」Vol.42 No.3 表紙より)
