Cover Photos

神経細胞間におけるH+負帰還に基づく抑制性シナプス

  • 2013/12/13 

Summary

神経細胞間におけるH+負帰還に基づく抑制性シナプスの模式図とシナプス間隙の酸性化をもたらす回転モーター分子としてのV-ATPase(H+ ポンプ)の分子構造を示す。

: 網膜における第2次ニューロンである水平細胞(HC)から放出されるプロトン(H+)が, 錐体視細胞(PR)への負帰還信号として作用していることを示す図(右側にシナプス部の拡大図)14)。錐体視細胞から水平細胞と双極細胞(BC)へ放出された伝達物質グルタミン酸(Glu)により,脱分極した水平細胞膜表面の V-ATPase(青楕円,液胞型プロトンポンプ,H+-ATPase,H+ポンプ)から細胞外へH+が放出され,シナプス間隙のH+ 濃度上昇が,錐体視細胞終末のCa2+ チャネルを抑制することにより,錐体視細胞から水平細胞と双極細胞への伝達物質(Glutamate)の開口放出を抑制する。つまり,水平細胞から放出されるH+が視細胞への負帰還信号として作用している。

: H+ポンプとしてのV-ATPaseの分子構造19)。ATP 加水分解エネルギーを用い回転モーター分子の回転機構によりH+を矢印方向に細胞質側(図上部)から,細胞外または液胞膜内(図下部)に輸送する。   
 V1領域:細胞質に存在するA〜Hの8種のサブユニットで,A3B3CDE2FG2Hを構成
 Vo領域:細胞膜に存在するa, c, c′, c″, dの5種のサブユニットで,ac4c′c″dを構成

: Vo領域におけるH+輸送のモデル19)。ATP 加水分解エネルギーによるV1領域のA3B3の回転エネルギーが回転軸DFdを通じて,円環状のプロテオリピッド(6つのc サブユニットc4c′c″よりなる)を回転駆動し,その反時計方向への回転(膜面から細胞質側を見た時)にともないaとc サブユニット(各々黄色と紫色)にある2つの半チャネル(細胞膜の内・外に各々開口部を持つ円筒状の管)を通じたH+ 輸送が考えられている。すなわち,aサブユニット上のアルギニン残基(緑丸)とcサブユニット上のグルタミン酸残基(赤丸) とで,H+の輸送(赤丸と下向き赤矢印)を行う。(BとCの図面はElsevier 社の許諾のもとに利用。 引用文献は本誌p183-193掲載の総説より。)

埼玉医大・医学部,理研・創発物性科学研究センター  山田 雅弘 

(出典: 学会誌「比較生理生化学」Vol.30 No.4 表紙より)

 

TOP