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覚醒マウス体性感覚野における脳血流二次元画像

  • 2013/1/11 

Summary

局所脳血流量はニューロン活動から数百ミリ秒で増加を開始し,活動終了後は数十秒で安静時のレベルまで減少する。著者らが開発した脳血流測定慢性実験系では,このようなダイナミックな脳血流動態を二次元動画として得ることができる。

 脳のニューロン活動によって介在ニューロンやアストログリア細胞から N0 や COX-2 など複数の血管拡張因子が放出されると,周囲に存在する細動脈や毛細血管が拡張し,局所的な脳血流の増加が引き起こされる。局所脳血流量はニューロン活動から数百ミリ秒で増加を開始し,活動終了後は数十秒で安静時のレベルまで減少する。レーザースペックル血流計は,このようなダイナミックな脳血流動態を二次元動画として得ることができる(本文参照)。図はレーザースペックル血流計を用いて,覚醒マウスの体性感覚野における血流量変化を測定した結果である。Aは安静時の脳表血流マップを,Bは安静時血流量をヒゲ刺激にともなう賦活血流量で除することで求めた差分処理画像(変化率)を示しており,ヒゲ刺激にともなうバレル野での血流量増加が確認できる。下段のA’とB’は,上段のAおよびBと同一個体から測定した1週間後の二次元画像である。カラースケールは,赤に近づくほど変化が大きいことを,青に近づくほど変化が小さいことを意味する。。

 これらの画像は,著者らが開発した覚醒マウスの脳血流量変化を検出できる実験システムを用いて測定した。脳血流測定の慢性実験系の構築は,アルツハイマー病や脳梗塞などの病態を再現したモデル動物への応用が期待でき,病態が脳血流動態に与える影響を経時的に明らかにできる可能性がある。

放射線医学総合研究所 田桑 弘之,岩手大学 松浦 哲也 

 

 

(出典: 学会誌「比較生理生化学」Vol.29 No.4 表紙より)

 

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