Cover Photos

ショウジョウバエメスの性行動の神経支配

  • 2011/9/3 

Summary

キイロショウジョウバエを利用した性行動の研究は近年急速に発展し,その分子生理機構が明らかにされつつある。

  キイロショウジョウバエの性行動は1950年代から研究され,多くの研究者によりその詳細な行動が報告されてきた。そして,遺伝子操作が容易であることから,キイロショウジョウバエを利用した性行動の研究は近年急速に発展し,その分子生理機構が明らかにされつつある。
 通常,オスとメスが接触した後にオスが求愛を開始し,オスはメスに対してバリエーションに富んだ求愛行動(定位,タッピング,追尾,翅振動,リッキング,交尾試行)を示す。写真左上はメスに対して翅振動とリッキングを 同時に行っているオスを示している。このようなオスの求愛をメスが受け入れれば交尾にいたるため,最終的な交尾の決定権はメスが握っていると言える。メスがオスを受け入れる度合いはメスの「性的受容性」と呼ばれている。興味深いことに,TRP チャネルをコードするpainless 遺伝子の突然変異体メスでは,性的受容性が野生型よりも 著しく上昇する。painless 遺伝子のプロモーターによりGFP 遺伝子を発現させると,成虫の頭部に存在するさまざまな感覚ニューロン(写真右上)や脳神経(写真下)でGFPの発現が確認されることから,メスの性的受容性の制御にこれらのニューロンが関与している可能性がある。遺伝学的な操作によってメスの性的受容性を上昇させることができることから,野生型メスではある程度オスの求愛を拒絶する状態がデフォルトとなっていると考えられる。

首都大学東京理工学研究科生命科学 坂井 貴臣 

 

 

(出典: 学会誌「比較生理生化学」Vol.28 No.2 表紙より)

 

TOP