鳥襲撃仮説

  • 2021/08/01

Summary

ゼブラフィッシュは雨が降るとアオカワセミの襲撃が少なくなることを知っていて,グリシン受容体タンパク質の動態を変化させることで,天候の変化に即応する環境適応をしているのだろう。

 ゼブラフィッシュ(Danio rerio)はインドやネパールなど南アジアの河川に生息する淡水魚で,プランクトンや小さな虫を食べて生きている。清流の宝石とよばれるカワセミは色鮮やかな羽が特徴で,小魚を捕って食べる。南アジアに生息するアオカワセミはゼブラフィッシュの天敵とされ,上空から狙いをつけて水面にダイブしてゼブラフィッシュを捕捉して食べる。そのためゼブラフィッシュは音に敏感で,アオカワセミの襲撃を水音で察知して,すぐさま逃避行動をとることができる。我々はゼブラフィッシュに雨の音を聴かせると,その後は水音による逃避行動の誘発が低下することを見出し,その分子機序がシナプスにおけるグリシン受容体タンパク質の動態変化にあることを明らかにした(本号総説参照)。雨が降ると雨粒が無数の水紋を作り,上空の鳥からは水面下の魚を見つけにくくなる。ゼブラフィッシュは雨が降るとアオカワセミの襲撃が少なくなることを知っていて,グリシン受容体タンパク質の動態を変化させることで,天候の変化に即応する環境適応をしているのだろう。
 イラストは安西未玖さん(青山学院大学4年生)の作品。

鳥襲撃仮説青山学院大学 平田 普三

 

(出典: 学会誌「比較生理生化学」Vol.38 No.2 表紙より)

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