学会組織

会長挨拶 (2020)

  • 2020/1/26

Summary

2020-2021年度JSCPB会長からのご挨拶です。

会長就任のご挨拶/深田 吉孝 (東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻)

 このたび2020年1月より、日本比較生理生化学会の会長をお引き受けすることになりました。微力ではありますが、会員の皆様のご協力を頂きながら本学会の発展のお役に立てるよう努力する所存です。どうぞ宜しくお願いします。

 本題の前に自己紹介させていただきます。私の専門は生化学です。最近では時間生物学を標榜していますが、生化学的な解析を基礎にしています。活動の中心の学会はどこですか?という質問をよく受けますが、いくつかの所属学会の中で私は本学会に最も長く所属しています。京大・理にて大学院M2になった1979年の春、恩師の吉澤透先生から、ちょうどその頃に産声をあげた本学会の第一回札幌大会で発表するように言われました。当時の吉澤研の先輩達は、生物物理学会と動物学会で発表していましたが、吉澤先生のご指示が、そのあと40年を越えて私が本学会とお付き合いさせていただくきっかけになりました。

 学会設立時、企画委員長を引き受けられた吉澤先生は、大胆にも教授から院生までの各年齢層5人から成る委員会を立ち上げました。吉澤委員長の他、助教授の松浦晢志さん(近大医)、助手の曽我部正博さん(阪大基礎工)、博士D1の尾崎浩一さん(阪大理)、そして修士M2の私です。この企画委員会では多くの将来的な問題点を議論しましたが、最も重要だと考えたのは、大会の開催時期の問題でした。設立当初に想定された春〜初夏に加え、夏季および秋季のいずれが最適か、議論を繰り返しましたが、最終的には会員アンケートを実施することにしました。現在、本学会の大会は夏季から秋季の開催で安定していますが、当時、様々な意見や要望が出されました。私は、M2のくせに実験もせずアンケートの集計に時間をかけたことを思い出します。学位取得後、札幌医大に移り研究分野が変わりましたが、1986年に京大理学部の助手として古巣の吉澤研に戻り、1988年、吉澤先生が大会実行委員長として開催された第10回日本動物生理学会大会(京都会館)の準備まとめ役を務めました。その後、1992年、吉田正夫先生の業績を讃えて創設された吉田奨励賞の第一回受賞者に選ばれたことは、この学会で私が活動を続ける大きなモチベーションになりました。

 次に、新会長として考えていることを記します。非常に多くの生命科学系学会の中で、本学会の特徴を伸ばしたいと思います。それぞれの専門分野・手法に特化した数多くの学会の中で、本学会は幅広い生理機構に対して多彩な研究手法で迫るユニークな学会だと思います。この特徴を維持し発展することこそ本学会の存在意義だと思います。ポストゲノム時代では「遺伝子・分子から行動へ」という合言葉のもと、多くの生命系分野において多階層を意識した研究が多くなりました。本学会においても、同じ傾向はあるのですが、今のところ分子レベルの研究分野への展開がやや手薄だと感じます。高橋景一会長の頃に多くの議論を経て「生化学」が学会名に入ったことを真摯に受け、私は分子レベルの研究をこれまで以上に活性化したいと考えます。このためには、会員の新たなリクルートが考えられますが、容易ではないかもしれません。既存の枠組みの中で考えると、大会シンポジウムのテーマ設定を分野拡大し、本学会員以外の方々を積極的に招待して講演していただく、できれば会員になっていただく、という方策はどうでしょうか。学会誌の総説やトピック紹介の執筆を非学会員の方々にお願いするのも新会員リクルートの手がかりになるでしょう。本学会員の皆さんが、私のような生化学者を学会の異端児とせず、会長に選んで下さった勇気に対し、私は何とかお応えしたいと考えています。

 また、神崎前々会長が開催された昨年の東京大会のランチ討論会において、私はすでに二つ大事な考えを述べました。一つは、紙媒体の学会誌を是非とも維持したいという主張です。非常に広くヘテロな研究分野の研究者が集まる本学会においては、毎年の大会で互いに顔を合わせるのと同時に、定期的に発行される学会誌が手元に届くことは貴重な意見交換であると思うからです。学会誌の編集に汗を流された歴代の編集委員長と編集委員の皆さんに心から感謝しています。そのおかげで、私の講義ノートも折々にグレードアップできました。もう一つは、学会年会費の据え置きです。必要経費をギリギリまで削ぎ落とし、1年でも長く現行の年会費を維持するように、将来の会長にもぜひお伝えしたいと思います。会員が減る可能性があるイベントは絶対に避けるべきだと考えるからです。この他にも、若手研究者の啓蒙育成、学会の国際化、他学会との協調的活動、など多くの楽しみなテーマがあります。会員の皆さんからのフィードバックを得てワクワクする学会活動を目指したいと思いますので、どうか率直なご意見を聴かせていただけますよう、お願い申し上げます。

 

  2020年1月26日

日本比較生理生化学会
会長 深田 吉孝

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